テレビ特撮の明日(あした)

先日放送された「ウルトラマンティガ」第28話。その演出や脚本については、色々と議論を巻き起こす事でしょうが、特撮演出についても従来のテレビ特撮のレベルを超えるカットが続出していました。ここでは、いくつかの印象的な特撮カットを見直してみたいと思います。


1.カメラアングル

従来のエピソードと比べて、かなり立体的なアングルのカットが多用されてましたね。こういう視点に変化のある映像が入ると、特撮で描かれる世界に広がりが出ます。

A B

C

はアートデッセイ号の俯瞰。画面右端にウィング2号、その上をアートデッセイ号が飛行しています。更に画面左端からウィング1号の主翼をフレームインさせ、遠近感を強調しています。

はジョバリエを挟撃する2機のガッツウィング。画面手前右側からガッツウィングがフレームイン。結構映像的な快感のあるカット。

はジョバリエ攻撃の為に集結したTPCの戦車部隊。セットの作り込みもさることながら、広角レンズと遠近感を強調したセット配置が広がりを感じさせます。

2.メカ描写

今回の特撮の中心はこれに尽きます。これほど拘った描写というのは、テレビシリーズでも滅多にお目にかかれるものではありません。

格納庫のガッツウィング1号。実は今回の特撮で一番ハッとさせられたのがこのカット。搭乗しているダイゴ隊員は本物。ミニチュアのガッツウィングに、キャノピーの周囲だけセットを合成しています。ゆっくりと閉じて行くキャノピーガラスまで描写しているのは涙モノです。テレビシリーズでこんなカットが観られようとは!

ウルトラではおなじみの管制室カット。しかし、前のカットから連続してこのカットに来られると、結構グッと来るモノがあります。ガッツウィングの発進については、一度全力投球のフルヴァージョンを見せてください!その時には是非カタパルトからの発進シーンは撮り直してネ(いやはや…)。

キャノピーガラスに反射する雲。凝ったカットであります。ガッツウィング側の画像照度が低いのが、少し残念。

これも結構ハッとさせられたカット。パルスビームを発射するガッツウィングですが、弾と機体のスケール感が破綻していない処が嬉しい。テレビシリーズでは、殆どスケール感が無視されて来たっていうのが、日本特撮の実態でしたからね。

望遠ぎみのアングルで捉えられるTPCの戦車。これまた凝ったカットです。戦車の描写にも執念感じます、今回(いやはや…)。

戦車の砲撃は合成。これも従来なら火薬の一発撮りでしょうね。硝煙がちゃんとスケールを合わせて描写されるんで、戦車の大きさを自然に認識できます。発砲の瞬間、ちゃんと元の画像に発光表現が入っているのもさすが。単に映像を合成しても、それだけでは不十分なのです。

結構大胆な合成ですが、それなりに観られるのはデジタル合成の威力。実景の背景、モデルの戦車、スタジオ撮影されたヤズミの背面の3要素を合成。さらに戦車の巻き上げる埃も合成されます。

なんか非常に嬉しかったのがこのカット。花を踏み潰す戦車のキャタピラ。演出上もキーになるカットという事か、ちゃんと大スケールの部分モデルを作成して撮影。ミニチュア撮影の基本ってコレだと思うんですよ。総てのカットを1種類のモデルで済まそうとすると、映像が破綻しちゃうんですよね。

「ティガ」の特撮って、確かに新しい何かを感じさせてくれます。この辺りの"意欲"は東映作品にも見習って欲しい処。20年近く全く進歩のない(今年の"メガレンジャー"でもまたもや!)"戦隊"のロボ戦のクオリティの低さ(むしろ最近は"バトルフィーバー"や"デンジマン"の頃と比較しても退歩している。最近の作品のロボ戦は、あえて"アマチュア以下"だと書こう!)は、仮にも特撮をうたう番組なら猛省すべきです。バンク特撮で見せるあの特撮を、ぜひ本編でも!

ちょっと脱線しましたが、今回の特撮って、テレビでも此処までできるって処をみせた事では、かなり意義のあるエピソードだったんではないでしょうか?日本のテレビ特撮にも、まだまだ明るい明日はあるのだ!(いやはや…)